読んだもの vol.4
最近読んだものについて。
ロミオとロミオは永遠に(上)(下)/恩田陸
~日本人だけが地球に居残り、膨大な化学物質や産業廃棄物の処理に従事する近未来。それを指導するエリートへの近道は、「大東京学園」の卒業総代になることであった。しかし、苛酷な入学試験レースをくぐりぬけたアキラとシゲルを待ち受けていたのは、前世紀サブカルチャーの歪んだ遺物と、閉ざされた未来への絶望が支配するキャンパスだった。やがて、学園からの脱走に命を燃やす「新宿」クラスと接触したアキラは、学園のさらなる秘密を目の当たりにする…。ノスタルジーの作家・恩田陸が、郷愁と狂騒の20世紀に捧げるオマージュ。 ~
笑えない状況の近未来だった。
現代に溢れているあらゆるサブカルチャーが「退廃的」とみなされ、政府により排除され、葬り去られた。それでも、いろいろな人の心の拠り所として、あるいは住処として、遺物として地下に残った。そんな「アングラ」はとてもきらきらしていて素敵だった。それに魅せられる未来の若者たちも輝いていた。
筆者もあとがきで書いているように、ちょっと絶望的な終わり方だったけど、漫画みたいにスピーディーで、濃厚で面白かった。
~信州財界一の巨頭、犬神財閥の創始者犬神佐兵衛は、血で血を洗う葛藤を予期したかのような条件を課した遺言状を残して他界した。血の系譜をめぐるスリルとサスペンスにみちた長編推理。(中島河太郎)~
有名なあのシーンの印象から、なんとなくコミカルな先入観を持ってしまっていたけど、全然コミカルじゃなかった。重々しく、悲しい話だった。改めて、映像を観てみたいと思った。
人面瘡/横溝正史
~「わたしは、妹を二度殺しました」。金田一耕助が夜半遭遇した夢遊病の女性が、奇怪な遺書を残して自殺を企てた。妹の呪いによって、彼女の腋の下には人面瘡が現れたというのだが…。表題他、四編収録。~
短編集。「人面瘡」がなかなか始まらないのでそわそわした。「人面瘡」は割とすっきりした話だった。
収録作品のうち、特に印象に残ったのは「蝙蝠と蛞蝓」。主人公が、裏に住んでいる女を蛞蝓と称して日々観察し、その挙動にいらいらしているという状況は異様で病的で、それでいてちょっと笑えた。その後の展開も意外性があっておもしろかった。